エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役 CEO:内藤晴夫、以下 エーザイ)とバイオジェン・インク (Nasdaq: BIIB、本社:米国マサチューセッツ州ケンブリッジ、CEO:ミシェル・ヴォナッソス、以下 バイオジェン)は、このたび、抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体レカネマブ(開発品コード:BAN2401)について、脳内アミロイド病理が確認されたアルツハイマー病(AD)による軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment:MCI)および軽度 AD(これらを総称して早期 AD と定義)を対象とした大規模なグローバル臨床第III相Clarity AD 検証試験において主要評価項目(CDR-SB:Clinical Dementia Rating Sum of Boxes*)ならびに全ての重要な副次評価項目を統計学的に高度に有意な結果をもって達成し、良好なトップライン結果を取得したことをお知らせします。
エーザイの CEO である内藤晴夫は「エーザイは 1990 年代後半にアリセプトを米国、日本で発売して以来、世界 100 カ国以上で承認を得て、認知症当事者様、そのご家族にお届けすると共に、疾患啓発やまちづくりを通じて人々との共感を築いてきました。アリセプトから約 25 年を経て、この度レカネマブ(抗 Aβ プロトフィブリル抗体)のピボタルスタディーに良好な結果を得、ADコミュニティーの期待に応えることができることは、我々の使命を果たすことであり重要であります。AD は当事者様とご家族にとり大きな損失であると同時に、社会にとっても生産性の低下、社会的費用の増大、疾患に対する憂慮の拡大など、甚大な影響を及ぼしており、その解決や軽減に資することは大きなインパクトがあると存じています。また AD の病態生理学的側面においても、今回の結果は、Aβの脳内異常蓄積が原因の一つであるとするAβ仮説をプロトフィブリルをターゲットとするレカネマブが臨床試験において証明することとなり、これからの AD の診断・治療の充実、そして様々な治療オプションの開発の活発化など新たな地平を拓くことに繋がると期待しています。Clarity AD 試験の成功は、試験にご参加いただいた当事者様、そのご家族、介護者様、そして世界中の治験医師の皆様の献身的なご協力のもとに達成できた成果であり、我々はその貴重なご貢献に深く感謝いたします」と述べています。
バイオジェンの CEO であるミシェル・ヴォナッソスは「本日の発表は、レカネマブが AD の進行を遅らせ、認知機能と日常生活機能に意義のある影響を与える可能性を示しており、承認されれば、患者さんとそのご家族に希望をもたらすものです。凝集した脳内Aβの除去が、この疾患の早期段階の患者さんの病気の進行を遅らせることとの関連を示したことは重要と考えています。この画期的な国際共同治験に参加された多くの患者さんに感謝するとともに、これまで十分な治療を受けていなかった層の方々の登録に尽力いただいた治験担当医の皆様に謝意を表します。ニューロサイエンスにおけるパイオニアとして、この病気を克服するためには複数のアプローチと治療選択肢が必要であると考えており、今回の結果の意義について、患者さん、科学や医学の専門家コミュニティーと議論していくことを楽しみにしています」と述べています。
米国において、レカネマブは、2022 年 7 月に迅速承認制度に基づく生物製剤ライセンス申請(Biologics License Application:BLA)が米国食品医薬品局(FDA)に受理され、現在審査中です。本迅速承認申請は優先審査(Priority Review)の指定を受け、PDUFA(Prescription Drugs User Fee Act)アクション・デート(審査終了目標日)が2023年1月6日に定められました。FDAは、本 Clarity AD 試験の結果について、レカネマブの臨床的有用性の検証試験として評価することに合意しています。迅速承認制度では本検証試験以外の全てのデータが審査され、フル承認に向けた申請においては主に検証試験が審査対象となります。我々は、迅速承認制度により本試験の審査以外のパートの審査を先行して完了することにより、米国において、一日でも早くフル承認に基づきレカネマブを当事者様へお届けすることをめざしています。日本においても、2022 年 3 月より、医薬品事前評価相談制度を活用し、本検証試験以外の申請データを医薬品医療機器総合機構(PMDA)に提出しています。これにより、今回の Clarity AD 試験に基づく申請に対する審査期間を短縮し、一日でも早くレカネマブを当事者様へお届けすることをめざします。